伊藤テクライト事務所

書評

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マニュアル制作・ライティング

認知科学・認知心理学

UIとユーザビリティ

デザイン

日本語

その他

<☆印の意味>

☆☆☆ →ぜひ読んで
☆☆ →けっこういい
☆ →時間があれば読んで

マニュアル制作・ライティング

理科系の作文技術

オススメ度:☆☆☆

著者:木下是雄

出版社:中公新書

コメント:理科系の学生や技術者のために、論文・レポート・説明書・手紙の書き方を解説。テクニカルライターの必読書。

日本語の作文技術

オススメ度:☆☆☆

著者:本多勝一

出版社:朝日文庫

コメント:わかりやすい文章を書くための「技術」を解説。名文を書くことを目的とした文章読本の類とは一線を画す名著。これまたテクニカルライターの必読書。

実戦・日本語の作文技術

オススメ度:☆☆

著者:本多勝一

出版社:朝日文庫

コメント:『日本語の作文技術』の応用例を多数取り上げた続編。

コンピュータソフトマニュアルの書き方

オススメ度:☆☆

著者:ジョナサン・プライス

出版社:日刊工業新聞社

コメント:アップルコンピュータ社のテクニカルライターが、マニュアルのライティング技術を伝授する。制作工程順に仕事の進め方やライティングのノウハウを具体的に解説し、工程ごとのチェックリストもつけてある。

マニュアル・バイブル

オススメ度:☆☆

著者:エドモンド・ワイス

出版社:啓学出版

コメント:プログラミングの手法をマニュアル制作に応用し、マニュアルを「構造化」しようという本。

マニュアル作成の構造化手法

オススメ度:☆

著者:小林敦

出版社:日経BP社

コメント:『マニュアル・バイブル』の訳者が、構造化の手法をさらに発展させ、具体化した内容の本。

ドキュメント作成方法論

オススメ度:☆☆

著者:Sandra Parkin and Associates,inc.

出版社:日経BP社

コメント:DDM(Document Development Methodology、ドキュメント作成方法論)の解説書。DDMはマニュアル制作を工学的な手法で分析し、工程全体を体系化したもの。

ユーザーマニュアル執筆ガイド

オススメ度:☆☆

著者:Brad M.McGehee

出版社:日経BP社

コメント:テクニカルライティングの入門書。僕は仕事全体の流れや、仕事に取り組む姿勢などをこの本から学んだ。ストーリー性のあるコラム「ジルとデビットの物語」が面白く、この本への興味を最後までつないでくれる。

わかりやすいマニュアルの作成法

オススメ度:☆

著者:高橋昭男

出版社:日経BP社

コメント:現実に即したマニュアル作成の入門書。全編具体的にテクニックやノウハウが書かれている。

ユーザ・読み手の心をつかむマニュアルの書き方

オススメ度:☆

著者:海保博之/堀敬造/加藤隆/原田悦子

出版社:共立出版

コメント:認知心理学の観点からわかりやすいマニュアルを考えた本。「わかりすさ」がどういう工夫によって実現できるか、その基本的な考え方を学ぶことができる。原則的話が多いので実用性は求められない。

技術者・学生のためのテクニカルライティング

オススメ度:☆

著者:三島浩

出版社:共立出版

コメント:とても読みやすかった。書かれているのは基本的なことがらなので、テクニカルライティングの入門者にお勧め。

文章・用字用語ハンドブック

オススメ度:☆☆☆

著者:テクニカルコミュニケーション研究会編

出版社:日経BP出版センター

コメント:マニュアル作りの概略、文章の書き方、用字用語についてなど、テクニカルライターが知っておくべき事柄を幅広く、かつ具体的に解説している。例文や付録の資料(漢字とかなの使い分けなど)などが豊富で、実用的。

「分かりやすい表現」の技術

オススメ度:☆☆☆

著者:藤沢晃治

出版社:講談社

コメント:予想をはるかに超えるよい本だった。面白く読めて、役に立つ、そんな本。

広告、標識、手紙、メモ、マニュアル、ウェブサイト、…。本書は、さまざまな「表現」に共通する「分かりにくさ」の原因を調べ、どうすれば「分かりやすく」なるかを16のルールにまとめている。何より嬉しいのは、この本そのものが非常に分かりやすく書かれていることだ。この本そのものがわかりにくくては説得力がないわけだが、むしろこの本が、この本で説明されている技術のよい適用例となっている。

16のルールは、一つ一つ詳しく解説されているほか、巻末でチェックリストとして整理されている。チェック項目が詳しく挙げられているので、実務にも適用することができるだろう。

「分かりやすい説明」の技術

オススメ度:☆☆

著者:藤沢晃治

出版社:講談社

コメント:藤沢氏の前著『「分かりやすい表現」の技術』も本書も「分りやすさ」をテーマとした本だが、前著が道路標識など視覚的な「表現」を多く取り扱っていたのに対して、この本は目の前にいる人々を説得する「説明の技術」を解説している。

副題が「最強のプレゼンテーション 15のルール」となっているとおり、中身は15のルールを説明していくスタイル。プレゼンを想定した内容だが、示されたルールの多くは、打ち合わせ、交渉ごと、文書作成、メール作成など、純然たるプレゼン以外にも応用可能だ。つまり、テクニカルコミュニケーターにとっても十分価値のある本だといってよい。

最初から最後までとてもわかりやすく書かれていて、この本自体が<「分かりやすい説明」の技術>のよい見本になっている。とくに、ビール瓶、映画館などの比喩がうまく使われていて、比喩の効果について大いに納得させられる(「比喩を使え」もルールの一つに挙げられている)。

「分かりやすい文章」の技術

オススメ度:☆☆☆
著者:藤沢晃治
出版社:講談社
価格:800円
ISBN:4-06-257443-8
コメント:『「分かりやすい表現」の技術』『「分かりやすい説明」の技術』に続く「分かりやすい」シリーズの三冊目。

「分かる」ということの認知科学的な解説や情報構造の話など、前二冊と重複した内容も含まれているが、文書レイアウトの決め方、センテンスの作り方、推敲の方法といった、文章表現に特化された内容になっているので、前二冊をお持ちの方も買って損はない。

ライター向けの本というわけではなくて(ライターにとってももちろん役立つ)、仕事でメールや報告書など何らかの実務文を書くことのある人ならきっと参考になるはずだ。この本そのものが「分かりやすい説明」の見本といってよい分かりやすさなので、とても読みやすい。

新版 考える技術・書く技術

オススメ度:☆☆

著者:バーバラ・ミント、山ざき康司訳

出版社:ダイヤモンド社

コメント:わかりやすい文章作成の”技術”の本としては本多勝一氏の『日本語の作文技術』があるわけだが、それはもっぱら文章レベルの話であった。本書は、いくつもの文章を含んだ文書全体をわかりやすくする”技術”を解説している。コンサルタントを主な読者として想定しているため考える技術についてもかなりのページが割かれている。”技術”というだけあって、内容は非常に論理的で説得力がある。最後に引用されている、著者の親戚というウィリアム・ミント氏の言葉に感動。

書き手とは、大隊を率いて一度に一人しか通れないような狭い隙間を縦列行進させる司令官のようなものだ。一方、読み手は出口で軍隊を受け取り、その隊列を再び整えねばならない。題材がどんなに大きかろうが、またどのように扱われていようが、そのコミュニケーションの方法はこれひとつである。順序や配列に関して、書き手が読み手にどんな義務を負っているかがわかるだろう。言葉遣いの巧みさ等はさておき、昔の雄弁家は順序や配列の大切さを大変強調している。それは、光栄にも我々書き手にわざわざ関心を傾けてくださる読み手の方々に対する義務だからである。(ウィリアム・ミント)

テクニカルコミュニケーション技術検定3級ガイドブック

オススメ度:☆☆☆

著者:テクニカルコミュニケーター協会

出版社:テクニカルコミュニケーター協会

コメント:テクニカルコミュニケーション技術検定の内容を解説した受験の手引きだが、TC関連の技術の基本的なことがらを解説しているのでTCの教科書としても使える。ライティングのことだけでなく、マニュアルの企画、ビジュアル表現、制作技術な ど、マニュアル制作の全般をカバーしている点や、実務を強く意識した内容になって いる点も評価したい。

このガイドブックには、もう一つ意義がある。それはTC協会のような公的な団体がこういう形でTC関係の技術を明文化することで、この業界全体で通用する共通の基準ができあがるということ。たとえば制作の各工程をどのように分け、どのように定義するかは、現状では個人や会社ごとにかなりばらつきがあるように思うが、このガイドブックが基準として存在することで、自分の考えが基準からどれくらいずれているかということを点検することが可能になると思う。もちろん、そこから基準に合わせるかどうかは個々の判断しだいということになる。それと時代とともに移り変わっていくべきものであるガイドブックの文言を教条主義的に絶対視するのも間違いだろう。

テクニカルコミュニケーション技術検定2級ガイドブック

オススメ度:☆☆☆

著者:テクニカルコミュニケーター協会

出版社:テクニカルコミュニケーター協会

コメント:3級ガイドブックをベースに、2級検定試験向けに内容を追加・変更したもの。ページ数は3級ガイドブックの154に対し217と、50ページ以上増えている。目次で比較してみると、次のような違いがある。

・第1章に「表現設計」が追加された
・第3章と第4章の内容が詳細になった
・第5章に「最新技術動向」が追加された
・第6章に「管理」が追加された

本書の価値については3級ガイドブックで述べたことがそのまま当てはまる。いずれ出版されるであろう1級ガイドブックが楽しみだ。

---

テクニカルコミュニケーション技術検定試験は、2級、3級にわかれていたものが2003年度から上級、初級という枠組みになった。よって、1級ガイドブックというのは出版されてない。

マニュアル制作ディレクション

オススメ度:☆☆☆

著者:テクニカルコミュニケーター協会

出版社:テクニカルコミュニケーター協会

発行日:2006年12月1日

コメント:テクニカルコミュニケーション技術検定のマニュアル制作ディレクション分野用ガイドブック。

試験用テキストではあるものの、ディレクション業務のイロハから最新のマニュアル制作の動向までカバーしており、マニュアル制作の実務の良質な教科書となっている。ディレクターを志す人には現時点でベストのテキストだと思う。難を言えば、執筆者の数が多いためか、情報の重複が若干目につく。

くたばれ「マニュアル」

オススメ度:☆

著者:海保博之

出版社:新曜社

発行日:2002年9月10日

コメント:認知心理学の海保博士の著書。題名こそ過激であるが、本書のスタンスは「ユーザ側からわかりにくさを告発する」ものであると同時に、「制作にかかわる側の実践を促すメッセージ」を発するものにもなっている。認知心理学の視点から、マニュアルの抱える問題点や改善の指針を示しているので、マニュアル制作に携わる人には参考になる。特に「5章 文書によるユーザ支援が不十分」はお勧め。

日本語を書くトレーニング

オススメ度:☆

著者:野田尚史・森口稔

出版社:ひつじ書房

発行日:2003年3月20日

コメント:大学や短大での「日本語表現」や「文章構成法」の授業で使われることを想定した本。一般の文章読本のように書き方の解説をするのではなく、お知らせのメール、レストランのメニュー、お店やイベントの広告など、具体的なシチュエーションごとの文例を約100点示し、どこがよくないか、どうすればよくなるかを問うという形式だ。

文例はよく考えられており、我々の日常でよく見受けるような、わかりにくい文章、問題ある文章が取り上げられている。これをわかりやすいものに直すというのは、情報の取捨選択と配置を考えることであり、テクニカルコミュニケーションの基礎といってもよい作業だ。だから、本書の演習に取り組むのはテクニカルコミュニケーションのよい基礎訓練となるだろう。

文章表現に唯一無二の正解というものは存在しないわけだからあえて正解は示さない、というのが本書の方針である。それゆえまったくの初心者が本書だけを頼りに文章表現について独学で取り組むという目的には向かない。やはり指導する人がいて初めて生きる本だと思う。

ザ・テクニカルライティング

オススメ度:☆

著者:高橋昭男

出版社:共立出版

発行日:1993年5月20日

コメント:『わかりやすいマニュアルの作成法』の著者による、テクニカルライティングに的を絞った本。マニュアルだけでなく、一般のビジネス文書や技術文書を書くことも想定した内容になっている。ライティング、すなわち「文章を書く」ということの入門書として役立つ。マニュアルのライティングということを考えると、章立ての決め方とか、図や表を使った表現とか、そういったことも大きな要素なのだが、本書はそこまでは十分にはカバーしていない。

Word + Acrobat DTP出力実践ガイドブック

オススメ度:☆

著者:山本大志

出版社:毎日コミュニケーションズ

発行日:2005年10月21日

コメント:WordはDTPソフトではないため、Word文書を印刷(プリンタ出力ではなく、業務用印刷機での印刷)するにはさまざまな障害や問題がある。他方、Word文書を印刷したいという需要は多い。結果として、Word文書で入稿されたデータをどのようにトラブルなく印刷するかというノウハウが、印刷会社と発注側には必要になってくる。そのノウハウを集約したのが本書。けしてWordやAcrobat自体の解説書ではない。

題名が示すとおり、本書はPDFを経由させることによって、Word文書を安全に、効率よく印刷する方法を提案する。その提案に沿って、Word文書はどのように作っておくべきか、PDF化する場合にどういう設定を用いればよいかなど、詳しく具体的に解説している。

索引作成マニュアル

オススメ度:☆
著者:日本索引家協会
出版社:日外アソシエーツ
発行日:1983年12月10日
コメント:文字どおり索引を作るためのマニュアル。パート1は、索引概論といった雰囲気で索引とは何か、企画や作成の一般的手順、見出し語の選び方や並べ方、コンピュータの利用の現状(といっても20年以上前の本なので、コンピュータ関係の話は古い)といった内容。パート2は本の種類別に索引作成の実際を解説。種類として取り上げられているのは単行書、百科事典、社会科学の文献、自然科学の文献、ニュース記事、地図。このうち、マニュアルの索引作成の参考になりそうなのは、パート1全体とパート2の単行書の章。

PL表示対策 マニュアル覚え書

オススメ度:☆
著者:相原憲二
出版社:日本工業新聞社
発行日:2003年9月12日
コメント:PL対策に重点を置いた、マニュアル執筆の基本を解説する本。製造物責任の考え方、安全対策の考え方、それらのマニュアルでの対応の方法などが丁寧に書いてあるので、マニュアル制作の初心者には参考になるだろう。実際のマニュアルに添削をした事例も載っており、どういうのがいけないか、どういうのがよいかが具体的にわかるようになっているのも特徴。

最新 取扱説明書作成マニュアル 米国CPSCガイドに学ぶ

オススメ度:☆
著者:佐藤圀彌・佐藤彰俊
出版社:シュプリンガー・フェアラーク東京
発行日:2005年1月15日
コメント:CPSCというのは米国消費者製品安全委員会。そこが発行した「消費者製品の取扱説明書作成についての製造業者の指針」というガイドラインを解説したのが本書。「取扱説明書作成マニュアル」と銘打っているものの、あくまでもガイドラインの解説なので、抽象的な記載が多いし、マニュアル制作に必要な工程全般を網羅しているわけでもない。ガイドラインに従った安全情報の扱いについての参考資料と考えればよいだろう。著者の一人が法律の専門家であるためか、国内のPL訴訟の事例解説はわかりやすかった。他の国際的規格・指針の情報についても述べられており、取扱説明書に関連する規格・指針の資料としても有用だ。
難を言えば、編集に若干問題がある。紙面レイアウトがどうも読みづらいし、本文中で引用されているCPSCガイドの訳文が非常にわかりにくい。このあたりは編集者がキチっと対処すべきだと思う。

すぐに役立つ 取扱説明書作成テクニック

オススメ度:☆
著者:宮田紀世夫
出版社:日刊工業新聞
発行日:2001年3月30日
コメント:マニュアル制作のあり方、設計方法、制作工程について非常に詳しく解説した本。全部で400ページを超える分量なのだが、冗長な記述も多いと感じた。取扱説明書制作の実務経験1年以上の人が対象となっているのだが、むしろ未経験の人が取扱説明書とはなんぞや、執筆とはなんぞや、といったことを知るうえで参考になる本ではないだろうか。
副題として「ISO9001設計管理手法を用いた」とあり、ISO9001設計管理手法に当てはめたマニュアル制作の方法の説明が本書の特徴の一つとなっている。

ワインバーグの文章読本 自然石構築法

オススメ度:☆☆☆
著者:ジェラルド・M・ワインバーグ
出版社:翔泳社
発行日:2007年11月19日
コメント:『ライト、ついてますか』などで有名なワインバーグの文章作成術。といってもこれは文章作成上の細かな技術についての本ではなく、文章を書いて身を立てていうえで重要な指針「興味のないことについて書こうと思うな」について解説し、そうやっていくために必要な生活の工夫の数々を紹介する本なのだ。
その工夫を一言で表す言葉が副題「自然石構築法」。壁(文章)は、石(自分がエネルギーを感じるさまざまな事柄)を積み上げて作る。しかし、作ろうと思う壁のコンセプトにあった石、いま積もうとしているその位置に合う石がすぐ見つかるわけではない。とすれば、場所に合わせて石を探してくるのではなく、ふだんから様々な石(自分がエネルギーを感じるさまざまな事柄)を集めておいて、そのストックのなかから目的に合った石を見つくろえばよい。そういう考えだ。
マニュアル制作にはあまり関係ない内容だが、雑誌や本を書くライターには非常に参考になるのではないかと思う。個人的には、もっと若いころに本書に出会えたなら素晴らしかったのにという気持ちだ。

心くばりの文章術

オススメ度:☆
著者:高橋麻奈
出版社:文春新書(文藝春秋)
発行日:2008年3月20日
コメント:章には読み手に対する「心くばり」が大切という主張のもと、説明する文章やアピールする文章を書く際のポイントを説明した本。これまでビジネス文書を書いたことのない新社会人には参考になるかもしれない。

正直なところ、この本の文章自体もう少し「心くばり」がなされてもよいかなという気がした。

マニュアルのつくり方

オススメ度:☆☆
著者:(株)日本能率協会コンサルティング
出版社:日本能率協会マネジメントセンター
発行日:2006年12月30日
コメント:業務マニュアルを対象としたマニュアルの作り方の本。TCとはまた違う、業務コンサルティングの観点で書かれているので、テクニカルライターには新鮮に感じられる。もちろん、TCと共通する部分も多いのだが、業務マニュアルに記載すべき標準手順の求め方や、業務マニュアルを作ったあとの浸透のさせかたなどは、TC関連の書籍ではあまり触れられない部分だろう。

読み手志向の「書く技術」で成果をつかみ取る

オススメ度:☆
著者:デボラ・デュメーヌ(柴田さとみ、上坂伸一訳、高橋研監訳)
出版社:ファーストプレス
発行日:2008年4月28日
コメント:ハーバード・ポケットブック・シリーズというシリーズ名に惹かれて購入したのだが、ちょっと期待外れだった。ビジネス文書の書き方の基本を学びたいという人向けということなのだろうが、内容が浅く感じた。また、訳書なので、文例が日本のビジネス文書にマッチしていないところがあり、そういう点でもあまり薦められない。

非論理的な人のための 論理的な文章の書き方入門

オススメ度:☆
著者:飯間浩昭
出版社:ディスカバー・トゥエンティワン
発行日:2008年12月20日
コメント:実践的なライティングの入門書。著者はまず、文章を「日記文」と「クイズ文」の2種類に分ける。日記文というのは、主として出来事を書いて、場合によって、それに対する感想を加えた文章。日記、ブログ、新聞記事、小説、これらはだいたい日記文だという。 クイズ文は、問題・結論・理由の3つを備えた文章。問題を提起し、その結論を示し、その理由を書くという構成。考えを伝えるのに有効な形式だという。論文、企画書などが該当するだろう。

本書が主に解説するのはクイズ文。問題・結論・理由のそれぞれについて、具体例を示しながらその書き方を説明してくれる。論理に説得力を持たせるために、ディベートの手法を用いている。

本書はとても読みやすい。文章に構造があって、論理があるということを理解するのによい入門書となるだろう。論文を書く必要のある学生、企画書の類を多く書くビジネスパーソン、ネットで(=文章で)よく議論をする人に薦めたい。 マニュアルの執筆に直接関係する内容ではないが、企画や提案を文書化したりレポートをまとめたりといった周辺にある作業には参考になるだろう。

説得できる文章・表現200の鉄則(第3版)

オススメ度:☆☆☆
著者:永山嘉昭、黒田聡、雨宮拓
出版社:日経BP社
発行日:2000年12月4日
コメント:『文章・用字用語ハンドブック』の代わりになってくれる本。文章の組み立て方、論理展開の仕方、箇条書きの書き方、誤解を防ぐ書き方、漢字・ひらがな・カタカナの使い分け方など、文章作成の実践的な“鉄則”を簡潔に解説。ビジネス文書を書くすべての人に薦めたい一冊。

Webライティング成功の法則60

オススメ度:☆
著者:上原佳彦
出版社:翔泳社
発行日:2007年12月18日
コメント:ウェブに載せる文章を書く人のための入門書。インターネットに特化した文章作成に関することに加え、HTMLの作りやSEOにも踏み込んでいる。

プロフェッショナルWebライティング

オススメ度:☆☆
著者:松下健次郎
出版社:技術評論社
発行日:2006年11月25日
コメント:副題は「コンテンツの文章品質を上げるために必要な知識」。基礎知識として、ウェブの特性や知っておくべき法令のことなどを解説したうえで、ライティングの技術を企画から仕上げまでの流れに沿って解説している。アクセシビリティやSEO、ライティングを依頼する場合の注意なども。実務的ノウハウに富む。

日本語作文術

オススメ度:☆
著者:野内良三郎
出版社:中公新書
発行日:2010年5月25日
コメント:実用文を対象とした作文術。類書でも必ず取り上げられる原則(文を短くすること、結論を先に持ってくることなど)を説明した部分が多いと感じられたが、名文である必要のない実用文では定型表現やオノマトペを積極的に活用すべしという主張は新しい。とはいえ、一般の人が書くような文章(メール、手紙、レポート、報告書、提案書など?)ではたして定型表現やオノマトペを活用する余地がどれくらいあるだろうか。

認知科学・認知心理学

認知心理学

オススメ度:☆

著者:小谷津孝明・星薫

ISBN:4-595-52707-1

出版社:放送大学教育振興会

コメント:放送大学のテキスト。認知心理学をテクニカルコミュニケーションに応用する、というような内容の本を読んだことはあるが、認知心理学そのものの本を読むのは初めて。学問の入門書には、ニュートラルな立場で書かれたものが適していると思うのだが、なんとなく本書はそうでないような気がした。文学作品からの引用が多く、読み物として面白くなるような工夫は凝らしてあると思うのだが。

仕事に多少なりとも役に立つのではないかとの助平心が本書を読んだ動機なのだが、それなりに得られたものがあった。すぐ忘れそうだが、次のような事柄が印象に残っている。

  1. カクテルパーティ効果
  2. カーネマンの注意配分モデル
  3. 一次記憶、二次記憶(短期記憶、長期記憶)
  4. マジカルナンバー7±2(短期記憶の限界)
  5. 短期記憶を長期記憶へと変える精緻化リハーサル
  6. 否定的動機付け(学習性無力感)
  7. 文章論における経済原理(既知情報―新規情報結合方式)

特に4と7は、マニュアル制作やライティングにそのまま適用できるものだと思う。(2001.11.15)

心理学 実験・研究レポートの書き方

オススメ度:☆

著者:ブルース・フィンドレイ、細江達郎・細越久美子訳

ISBN:4-7628-2046-6

出版社:北大路書房

発行日:1996年3月15日

コメント:放送大学のある講座で参考図書として指定されていたので入手。論文やレポートの執筆マニュアルといった内容。翻訳書だがとても読みやすい。ユーザビリティテストなど心理学系の実験のレポート作成に本書が参考になるだろう。(2004.2.29)

アフォーダンス−新しい認知の理論

オススメ度:☆

著者:佐々木正人

出版社:岩波書店

発行日:1994年5月23日

コメント:『誰のためのデザイン?』(D.A.ノーマン)などでTC関係者に知られているアフォーダンス理論。本書は、米国の心理学者ギブソンによって研究されたこの理論についての解説書。目に入ってきた光線が網膜で像を結び、それが脳で加工されて情報となるというのが、従来の認知の考え方だったのに対し、ギブソンは、情報は人間の内部で作られるのではなく人間の周囲にあると考える。この外部にある情報を表した言葉が「アフォーダンス」ということらしい。

佐々木氏は次のように書いている。

アフォーダンスとは、環境が動物に提供する「価値」のことである。アフォーダンスとは良いものであれ、悪いものであれ、環境が動物に与えるために備えているものである。

中略

物体、物質、場所、事象、他の動物、そして人工物など環境の中にあるすべてのものはアフォーダンスをもつ。動物ならばアフォーダンスを探索することができる。

科学解説書なので、マニュアル制作やライティングに役立つという内容ではない。しかし個人的には大変面白かった。

レイアウトの法則 ―アートとアフォーダンス―

オススメ度:☆

著者:佐々木正人

出版社:春秋社

発行日:2003年7月25日

コメント:佐々木正人氏のエッセイ、評論、対談などで構成された本。『アフォーダンス−新しい認知の理論 』は、ギブソンの理論の解説であったが、本書は佐々木氏が解釈・発展させた理論をベースとする本という位置づけになると思う。本書の内容をキーワードで代表させるなら、レイアウト、肌理(きめ)、アフォーダンス、ということになろうか。「レイアウト」とは、エディトリアルデザインにおけるレイアウトに留まらず、目に見える景色そのものを構成する事物の配置を指している。「肌理」は、モノの表面のあり方を指すのだが、単一の物体に限らず、空だとか水面だとか山肌、木々の集まり、砂利道など、とにかく目に映る事物を構成する各要素の表面のあり方すべてを含む。「レイアウト」や「肌理」を視覚によって読み取ることによって我々は外界を認識しているということのようだ。

楽しめる部分もたくさんあるのだが、全体としてはかなり難解。「レイアウト」という言葉を含む題名から、ページデザイン上のレイアウトについてアフォーダンスの観点から考察するような本かと思っていたのだが、そうではなかった。

UIとユーザビリティ

パソコンを隠せ、アナログ発想でいこう!

オススメ度:☆☆

著者:D.A.ノーマン、岡本明、安村通晃、伊賀聡一郎訳

ISBN:4-7885-0730-7

出版社:新曜社

発行日:2000年7月15日

コメント:『誰のためのデザイン?』で有名なD.A.ノーマンの本。原著が書かれたのは10年前だが、内容は古びていない。むしろいま読むと、ノーマンの予測するハイテク製品の未来像が実際のものとなりつつあることがわかり、本書の価値がいっそう実感できる。

 本書でのノーマンの主張は次の2つにまとめられる。

●コンピューターは隠れた存在であるべき。たとえば、電気を動力に変える装置であるモーターは、パソコン同様さまざまな用途に使われるが、電気ひげそり、扇風機、掃除機、洗濯機など、それぞれ専用の装置の中に組み込まれ隠れている。ユーザーはモーターそのものの使い方を意識する必要はない。コンピューターも同じように隠れた存在にならなければならない。(本書の原題が"The Invisible Computer"(見えないコンピューター)となっているユエン)

●コンピューターの組み込まれたハイテク製品は、ユーザーがさしたる努力もなしに容易に使える家電品(情報アプライアンス)となるべきで、そのためにはテクノロジー主導ではなく人間中心設計によって開発されなければならない。

 本書では、私たちテクニカルライターの現在の役割、そして人間中心設計で果たすべき役割についても言及されている。その部分については、少々理想化しすぎているような気がしないでもないが……。(2008.11.15)

誰のためのデザイン?

オススメ度:☆☆

著者:D.A.ノーマン、野島久雄訳

出版社:新曜社

コメント:アップルコンピュータ社のフェロー(研究員)であるドナルド・ノーマン氏による、認知心理学の観点からのデザイン論。道具の使い方がわからないのはその人のせいではない、デザインが悪いからだ、という話。物の形そのものが使い方を提示するというアフォーダンスの概念の解説が印象に残った。次のように解説されている。 ここで、アフォーダンス(affordance)という言葉は、事物の知覚された特徴あるいは現実の特徴、とりわけ、そのものをどのように使うことができるかを決定する最も基礎的な特徴の意味で使われている。椅子は支えることをアフォードする(支えるための)もので、それゆえすわることを可能にする(すわることをアフォードする)。

ヒューマンインタフェースガイドライン:アップルデスクトップインタフェース(日本語版)

オススメ度:☆☆

著者:アップルコンピュータ

出版社:アジソンウエスレイ社

コメント:現在世界中のパソコンユーザーの多くがその恩恵に浴しているグラフィカルユーザーインタフェースをパソコンの世界に持ち込んだアップルコンピュータが、1987年に発行した本(日本語版は1989年)。ユーザーインタフェースのガイドラインを解説したものだが、ここに示された徹底してユーザー側の立つ設計思想と、その微に入り細にわたる具体的な指針は驚異。これはコンピュータの世界を変えるのだという強烈な意志と情熱の結晶か。マニュアル作りにおいても、ここに語られる設計思想は大いに参考になると思う。

ウェブ・ユーザビリティ

オススメ度:☆☆☆

著者:ヤコブ・ニールセン、篠原稔和監修、グエル訳

出版社:エムディエヌコーポレーション

コメント:よく使われる言葉は短縮される傾向があるというが、「ウェブ」はその典型的な例ではないだろうか。以前は、ワールドワイドウェブとかWWW(だぶるだぶるだぶる!)などと言われていたものだ。いまでは酔っ払いのゲップ音めいた「ウェブ」の一言で通じる。そうなったのは、ウェブがメール(これも「電子メール」や「eメール」の省略形だ)とともにインターネットの中心的機能であり、インターネットの普及とともに我々の生活にも深く関わるようになってきているからだろう。

そんなウェブだが、現状はまだ万人が使えるものとなっているとは言いがたい。人気サイトならはそんなこともないが、動きの遅いサイトや複雑で求める情報が見つけられないサイトは珍しくない。つまり「ユーザビリティ(使い勝手・使いやすさ)」に問題があるわけだ。それを改善する方法を、さまざまな観点から解説してくれるのがこの本だ。本書から引用するなら、「この本は、ユーザビリティを向上させることによって顧客満足度を上げ、あなたのウェブサイトがユーザーを増やし、売り上げを上げるためのルールについて書いている」(p.335)ということになる。言い換えると、本書は「どのようなサイトを作ればよいか」を提示するものである。HTMLタグの解説だとはデザイン上の技術のような「どのようにしてサイトを作るか」という内容は含んでいない。

本書の構成は次のとおり。

はじめに ウェブ・ユーザビリティが注目される理由
第1章 ページデザイン
第2章 コンテンツデザイン
第3章 サイトデザイン
第4章 イントラネットデザイン
第5章 ハンディを克服する使いやすさ
第6章 世界の利用者への対応
第7章 未来の予測
第8章 シンプル・イズ・ベスト
あとがき
用語解説
索引

それぞれ実例を示しながら解説しているので、わかりやすい。まとめとなる第8章で示されたキーワードが面白い。それはホームラン(HOME RUN)と覚えることができる。

High-quality content(高品質なコンテンツ)
Often updated(頻繁なアップデート)
Minimal download time(最小限のダウンロード時間)
Ease of use(使いやすさ)

Relevant to users' needs(ユーザーニーズに適合すること)
Unique to the online medium(オンラインメディア特有であること)
Net-centric corporate culture(ネット中心の社風であること)
(p.326-328)

言うは易し行うは難し、という気がしないでもない。ここで示された数々のルールを踏まえて実際に一つのウェブサイトを構築するのは大変なことだろう。

帯の文章によれば、ヤコブ・ニールセン氏は、98年に「ドナルド・ノーマンとニールセン・ノーマン・グループを設立、代表を務めている」人。ノーマンは、『誰のためのデザイン?』のあのノーマンだ。(2001.1.7)

ホームページ・ユーザビリティ

オススメ度:☆

著者:ヤコブ・ニールセン&マリー・タヒル、風工舎訳

出版社:エムディエヌコーポレーション

コメント:一見「ウェブ・ユーザビリティ」のことかと思うようなタイトルだが、ここでいう「ホームページ」はウェブサイトのトップページのこと。サイトの「顔」となるホームページには、他のページと異なる工夫が必要で、それをユーザビリティの観点から分析したらどうなるか、というのがこの本。ヤコブ・ニールセンが書いた「ウェブ・ユーザビリティ」を、対象をホームページに限定し、さらに詳しく書いたものと考えてよい。

本の内容は三つに分けられる。最初がホームページのガイドライン。「1.会社名やロゴを適切なサイズで目につく場所におくこと」など113個のガイドラインが提示されている。これはサイト評価のチェックシートとして使えるだろう。

二つ目は、ホームページの統計分析。ホームページのダウンロード時間、表示幅、含まれているコンテンツの種類など、さまざまな項目について、実際に公開されているサイトを対象に調査した結果がまとめられている。これらは現状のインターネットのホームページの潮流がどうなっているかを把握するうえで参考になる。

三つめは、実際のホームページを取り上げてのレビュー。アマゾンやマイクロソフトなど32のサイトのホームページを、前述のガイドラインや統計結果と照らし合わせながら厳しく評価している。どんなサイトにも改善の余地があるということが思い知らされる。(2002.6.22)

ウェブ・ユーザビリティ&アクセシビリティ・ガイドライン

オススメ度:☆☆

著者:石田優子

出版社:毎日コミュニケーションズ

コメント:副題に「誰もが使いやすく、アクセスしやすいウェブサイトをデザインするための80の指針」とあるとおり、ウェブにおける使いやすさ(ユーザビリティ)とアクセスしやすさ(アクセシビリティ)を実現するための具体的なガイドラインを示した本。

中身は次の三つに分けることができる。
a.ユーザビリティとアクセシビリティの考え方や評価方法の解説(1、2章)
b.ガイドラインの提示(3〜5章)
c.公的機関などが公開しているアクセシビリティ指針の紹介(6章)

aは、ユーザビリティとアクセシビリティのことが分りやすく解説してあり、参考になる。特にアクセシビリティについては、なぜそれが必要か、どういう支援技術やツールがあるかといったことが概観できて、個人的には得るものが大きかった。

bが本書のメインで、サイトの企画、構成、基礎デザイン、ページ要素のデザインと、サイト制作の段階ごとにガイドラインを提示。内容は「title要素でそのページの内容を明確に示すタイトルを付ける」など具体的で、文章による説明に加え、ウェブの良い例と悪い例やHTMLコードの例も豊富に示してある。

ガイドラインの各項目はすべてU(ユーザビリティ)とA(アクセシビリティ)の分類記号により、その項目がユーザビリティとアクセシビリティのどちらに関するものなのかが示してある。ユーザビリティとアクセシビリティを別のパートに分けず、混在させて説明しているのが本書の特徴の一つでもあるが、読んでいくとその方針が妥当なものだということがわかる。UとAの両方の分類記号が付してある項目もあることからわかるように、両者は密接な関係にあり、どちらかだけを考えていたのでは不十分。多種多様な人々が快適に使えるウェブサイトにするには、結局のところユーザビリティもアクセシビリティも意識せざるを得ないということなのだろう。

このほか、アクセシビリティへの対応はサイトを魅力のないものにするというのは誤解だという話(p.31)と、アクセシビリティの改善は社会貢献という意味だけでなく、障害者や高齢者を顧客として獲得することにつながるというビジネス上のメリットもあるのだという話(p.61)も印象に残った。(2003.9.30)

ユーザビリティテスティング

オススメ度:☆

著者:黒須正明(編著)

出版社:共立出版

コメント:ユーザビリティテストとは何か、どう準備し、どう実施し、どう結果をまとめるかを具体的に実践的に解説した本。実際にユーザビリティテストを行う場合にはとても役に立つことだろう。

実践事例の一つとして取扱説明書をテストする場合が解説してあり、ここは特に参考になる。いくつかテストを実施してわかったことの例として次の3つが挙げられている。

1番目の「大事なことは手順に入れる」という方針は、意外な感じを受ける人もいるかもしれない。大事なことは「注意」として目立たせるほうがよいのではないのか、と。しかし、手順の流れから外れた「注意」などは、読んでくれないユーザがけっこういるということなのだろう。だから、たぶん、実際には両方 に入れるのがよいのだろう。

ユーザビリティエンジニアリング

オススメ度:☆☆☆

著者:樽本徹也

出版社:オーム社

コメント:副題が「ユーザ調査とユーザビリティ評価実践テクニック」となっているとおり、ユーザビリティテストについての実践的な本。ユーザ中心設計やユーザビリティテストの基礎となる概念的な事柄から、著者の経験で培われた現場で役立つノウハウまで詰め込まれている。星3つにしたが、これはユーザビリティテストについて知りたい人にとって、という意味である。そういう人には非常によい本。説明もわかりやすい。(2007.1.10)

情報アーキテクチャ入門

オススメ度:☆

著者:ルイス・ローゼンフェルド(Louis Rosenfeld), ピーター・モービル(Peter Morville)

翻訳:牧之瀬みどり、長谷川智可

監訳:篠原稔和

出版社:オライリー・ジャパン/オーム社

コメント: 題名を見ると、少しアカデミックな内容のように感じられるが、「ウェブサイトとイントラネットの情報整理術」という副題が示すとおり、ウェブに特化された内容である。2003年に改訂され「Web情報アーキテクチャ」という書名になっているようだが、そのほうが内容に合っていると思う。

本書はまず、ウェブ制作にどうしてアーキテクチャ(構造の設計)が必要かということと、情報を組織化・体系化するというのがどういうことかを説明する。そのうえで、ウェブのアーキテクチャを成り立たせるのに必要な要素である、ナビゲーションの構成、ラベリングの方法、検索システム(インデックスの作り方など)について解説する。最後の4分の1は、ウェブのアーキテクチャを構築していく過程を具体的に追っていく。

発行が1998年と、ネットの時間感覚からすると大昔の本で、おそらく技術的な面では時代遅れの内容も含まれているはずだが、膨大な情報をどのように整理し統合し組織化してウェブサイトとしてまとめるかという基本の部分は古びていないのではないだろうか。「3章 情報の組織化」や「5章 ラベリングシステム」はマニュアル制作にも応用がききそうな内容だ。原文からそうなのか、翻訳のせいなのかわからないのだが、文章が少々意味を捉えにくい感じがしたのがちょっと残念。(2006.4.3)

出版のユニバーサルデザインを考える

オススメ度:☆

著者:出版UD研究会 編

出版社:読書工房

誰にとっても使いやすいようデザインを工夫することや、そのデザインのことをユニバーサルデザインという。一般には携帯電話だとか自動車だとか家電品だとかのデザインのことというイメージがあるが、出版物にもその考えを当てはめることができる。例えば視覚障害のある人にも読める本、読みやすい本にするにはどうすればよいか。このように出版物についてのユニバーサルデザインを考える「出版UD研究会」という勉強会があり、そのセミナーでの講演を編集したものが本書である。

さて、マニュアル(取扱説明書)もまた一種の出版物である。そのマニュアルで説明している製品が、誰にでも使いやすいようにということを考えているのであるならば、マニュアル自体も同じように誰にでも読みやすいようにと考えるのは自然なことだろう。つまり、もし製品がユニバーサルデザインを考慮したものであるならば、マニュアルもまたそうでなければならない。

そういうわけで、この本を読んでみることにしたわけだが、大いに参考になるものだった。本書は3つの章からなる。

1章 さまざまな読者のニーズを知る

2章 五感をいかした多様なメディアの可能性

3章 誰でも利用できる読書環境をめざして

 

紙のマニュアルのユニバーサルデザインを考えるうえでもっとも参考になるのは1章で、内容は次のとおり。

・色覚の多様性から考えるカラーユニバーサルデザイン

・ロービジョンと読書

・LD(学習障害)の人への読書サポート

・脳神経心理学からみたわかりやすさ・ここちよさ

 

それぞれ異なる人の講演なのだが、いずれも障害の当事者や、障害を持つ人と直接関わっている人による話で、「ああ、そうなのか」と気づかされることも多い。例えば、P型強度という型の色覚障害の場合、赤色は黒っぽく見えるという。そのため、背景が黒っぽいと赤は目立たない。ところが赤は特に注意を喚起するための色として使われることが多い。マニュアルでもそうだ。それが目立たないとしたら、困ったことだ。赤に似ているように思えるが習字の添削で使うような朱色やオレンジ色だと見分けがつきやすいという。(2007.2.2)

実践ユーザビリティテスティング ―― 「利用品質」を忘れていませんか ――

オススメ度:☆☆

著者:キャロル・M・バーナム、黒須正明監訳、牧野祐子訳

出版社:翔泳社

コメント:タイトルどおり実践的なユーザビリティテストの本。ユーザビリティテストを実施するために必要なことがらを、テストの企画段階からテスト結果の分析・報告までの各工程について詳細に解説している。理論的な知見もカバーしつつ、実践的なノウハウや、企画書、タスクシナリオ、報告書などのサンプルも豊富に盛り込んである。

その結果として550ページものページ数になってしまっており、通読するのはしんどいが、工程に対応した章立てになっているので、必要な章をピックアップして精読するのがよいと思う。

ドキュメントのユーザビリティテストのこともかなり触れられており、それを考えているテクニカルコミュニケーターにはとても参考になるだろう。

難を言えば、ページ数が多いうえ、なんというか未整理な印象を受けた。原著の問題なのか編集の問題なのか。技術書の場合はやむを得ないのかもしれないが、もう少し翻がこなれていれば、とも思った。

個人的には『ユーザビリティエンジニアリング』のほうが簡潔にまとまっていてわかりやすかった。『ユーザビリティエンジニアリング』を読み、さらに詳細に知りたいというときがこの本の出番か。(2008.4.7)

デザイン

レイアウトひらめき事典

オススメ度:

著者:レナード・コレン、R・ウィッポ・メックラー、日本語版監修渋川育由

出版社:河出書房新社

コメント:レイアウトのさまざまなパターンを大量に収録した本。ほとんど文章はなくて、サムネール的にデザイン例が列挙されている。紙面の構成、見出しのデザイン、本文のデザイン、情報の処理、ビジュアル表現の研究、この5つの章からなる。デザイナーや、デザイナーではないが自分でマニュアルのデザインもするライターなどにはずいぶん参考になりそうな気がするが、自分は該当しないので実際のところ役立つのかどうかよくわからない。(2000.8.12)

ノンデザイナーズ・デザインブック

オススメ度:☆☆☆

著者:ロビン・ウィリアムズ、吉川典秀訳

出版社:毎日コミュニケーションズ

コメント:タイトルどおり、デザイナーじゃない人のためのデザインの本。前半はデザインの原則である、近接、整列、反復、コントラストの4つについて解説し、後半は活字の種類や使い方について解説。説明は非常にわかりやすい。悪いデザインが、デザインの原則を適用することで劇的に改善される事例が多数示されており、説得力がある。 ちなみにこの著者は、ガイ・カワサキの『それでもMac大好き!』(因幡圭司・大田朗訳、トッパン)において紹介されていた、「生活保護を受けて3人の子どもを1人で 育てている失業中の母親がカッコイイMac本を書いて出版するという夢を追い求め、 ついには成功と人気を勝ちえ、何万もの人にMacを使いやすくした」という物語の主人公でもある。(2000.8.14)

ノンデザイナーズ・ウエッブブック

オススメ度:☆☆☆

著者:ロビン・ウィリアムズ、ジョン・トレット、吉川典秀訳

ISBN:4-8399-0332-8

出版社:毎日コミュニケーションズ

コメント:「ノンデザイナーズ・デザインブック」のウェブ制作版。デザインの基本的な考え方をウェブ制作に適用した場合にどうなるかということを解説している。加えて、ウェブそのものや、制作方法、制作したウェブをインターネットで公開する方法などについても詳しく説明している。文体が親しみやすく、説明もとてもわかりやすい。初めてウェブを作る人、すでにウェブを持っているがもっとデザインをよくしたい人、そういう人たちに薦めたい。
気に入った言葉。
「サイトについて明確な答えを出しておくべき2つの質問があります。それは1)対象にする観客はだれか、2)このサイトで達成したいことはなにか、ということです。」P.81
「整列法には左揃え、右揃え、中央揃えがあります。次のルールにしたがってください。どれか1種類を選ぶこと。1種類の整列方をそれをページ全体に適応すること。」P.106
「あなたが作ったナビゲーション・システムに使い方の説明が必要なら、それは悪いシステムです。」P.132 (2000.10.2)

A Better Design Webページ リ・デザインブック

オススメ度:☆☆

著者:山本容子

ISBN:4-8399-0402-2

出版社:毎日コミュニケーションズ

コメント:まず著者について。版画家でコーヒーなどのCMにも出ているあの山本容子氏とは同姓同名の別人で、ウェブ制作のキノトロープにお勤めの方。 どういう人向けの本か。タイトルにあるとおり、ウェブをよりよいデザインに「リ・デザイン」(デザインしなおし)するにはどうすればいいかがテーマの本で、すでにウェブ制作の経験のある人が対象だ。自分でウェブサイトを作ったがいまいち見栄えがよくない、コンテンツをどう整理して見やすくすればいいのかわからない、といったような人にぴったりだろう。HTMLのタグのことはほとんど出てこないので、これから初めてウェブを制作するという人には不向き。 内容は下記の3つの章からなる。章はいくつかのセクションに分かれていて、セクションごとに改良の事例が紹介されている。改良前と改良後の状態が並べて対比されており、しかも改良によって見栄えがグっとよくなっていることがはっきりとわかるので、説明にも説得力がある。

Chapter1 A Better "Material"――素材の改良
 デジカメ画像の活用方法
 ロゴのデザイン方法
 タイポグラフィの事例など
Chapter2 A Better "Layout"――レイアウトの改良
 ホワイトスペースや背景画像の活かし方、使いやすいインターフェースデザインなど
Chapter3 A Better "Web Page"――Webページの大改造
 本書のメイン。実際のウェブサイトを改良する15の事例を紹介。
この本の専用サイトもある。
http://www.kt.rim.or.jp/~yoko-y/redesign/

(2001.4.22)

7日間でマスターする レイアウト基礎講座

オススメ度:☆

著者:視覚デザイン研究所編

ISBN:4-88108-143-8

出版社:視覚デザイン研究所

コメント:タイトルどおりレイアウトの基礎を7日に分けた構成のテキスト。7日間のそれぞれのキーワードを列挙すると、

1日目 様式、視覚度、図版率

2日目 文字のジャンプ率、写真のジャンプ率

3日目 グリッド拘束率、版面率

4日目 構成、書体

5日目 造形効果、主役の明示、準主役は離す

6日目 群化(グループ化)、流れを整理する、四隅をおさえる、版面線の利用

7日目 リズム、対比、アクセント、比例(プロポーション)、バランス、融合

といった具合。雑誌、名刺、チラシなどの実例を多数用いての説明なので、わかりやすい。実践的な本。(2010.10.30)

日本語

漢字と日本人

オススメ度:☆☆

著者:高島俊男

出版社:文藝春秋社

コメント:日本語でコーコーという言葉を口にした場合、それが高校なのか孝行なのか航行なのか(その他、口腔、後攻、煌々などもある)、判断がつかない。つまり漢字という文字を出してきてはじめて言葉の意味がわかる。そんな言葉が日本語にはやまほどある。本書によるとこれは言語として非常に特殊な、異常な状態ということらしい。この異常事態は、日本語のそもそもの性質ということではなく、明治期に大量の外国語を漢語に訳して導入したことに由来するという。

異常ではあるが、もうそうなってしまっている以上、必要な部分においては漢字に頼らざるを得ない。かつては、効率化のために、日本語の文字をすべてローマ字にせよとか、かなだけにせよという主張があったらしいが、漢字なしには意味の決まらない言葉がやまほどあるから、そんなことは不可能だ。筆者はあとがきで次のように述べる。

「わたしの考えは、まず第一に、漢字と日本語とはあまりに性質が違うためにどうしてもしっくりこないのであるが、しかしこれでやってきたのであるからこれでやってゆくよりほかない、ということ、第二に、われわれのよって立つところは過去の日本しかないのだから、それが優秀であろうと不敏であろうと、とにかく過去の日本との通路を絶つようなことをしてはいけないのだということ、この二つである。」

国語審議会というのも、もとをたどると、日本語から漢字をなくしてしまうことを最終目的としていたらしい。それでその1ステップとして漢字の使用を制限したわけだ。

漢字の訓読みが、英単語に日本語の読みをつけるようなものだという話も面白かった。つまり、もともと文字を持たなかった日本語のなかに漢字が入ってきたとき、日本人はその漢字を中国での発音で読むのでなしに、同じ意味の日本語の言葉を割り当ててそれを読みとした。たとえば猫と書いてネコと読んだ。それは英語でcatとかいてネコと読むのと同じような無茶なやり方だったわけだ。それが訓読みなのだという。漢字にはすっかりなじんでいるから、訓読みがそんな無茶なものだったとは思いもよらなかったが、言われてみれば確かにそうだ。一方、音読みのほうは、中国での読み方を真似てあてた読み方。やはり英語と比較するなら、catと書いてキャットと読むようなもの。

漢字や日本語の成り立ちに興味のある方なら、非常に面白く読めることを保証する。(2001.12.19)

日本語練習帳

オススメ度:☆

著者:大野晋

出版社:岩波書店

コメント:国語学で有名な大野晋(すすむ)氏が著者。テクニカルライティングとは直接関係ないが、言葉の奥の深さ、言葉と向き合うことの楽しさを教えてくれる。センテンスを短くする、「が」を使わないといった文章作成の心得など、大いに参考になる部分もある。「思う」「考える」の違い、「は」と「が」の違いなどの話も興味深い。

日本語の教室

オススメ度:☆☆

著者:大野晋

出版社:岩波書店

コメント:

・日本語がよく書ける、よく読めるようになるには……
・「私のことを打った」など、ことをつけるのはどうしてですか
・仮定のことを言うのに過去形を使うのは何故ですか
・日本語が南インドから来たとは本当ですか
・漢文の学習を復活させたいのですか
・日本の文化、文明をどう見ておいでなのですか
・文明の輸入国日本には何が欠けているとお考えですか
・これからの日本はどうすべきなのか具体的にお話し下さい

など合計16個の質問に国語学者大野晋が答えるという内容の本。前半は日本語の話なのだが、後半は文明論といった方向へ進む。言葉というのは、ただの意思の伝達手段ではなく、我々が物事を把握するための道具であり、これをおろそかにしたのでは、その国の文明そのものへの悪影響があるという話。大いに説得力があった。

日本語相談一〜四

オススメ度:☆

著者:大野晋/丸谷才一/大岡信/井上ひさし

出版社:朝日新聞社

コメント:週刊朝日の連載を単行本にしたもの。読者からの日本語に関する質問に日本語の「プロ」達が答えるというQ&A形式で、読みやすい。

ニホン語日記

オススメ度:☆

著者:井上ひさし

出版社:文藝春秋社

コメント:身の回りの「日本語問題」を取り上げたエッセイ。「説明文の伝達度」という節では実在の取扱説明書の文章を例に、わかりにくさを分析している。その結びの言葉「小説を読まない人は多い。しかし説明書はだれもが読む。それも人はじつに熱心に読む。とすれば、日本語の「実力」は、説明書にもっともよく表われるのではないか。重箱の隅を楊枝の先でほじくるような真似をしたのも、説明書の作者たちに声援を送りたかったからで、他意はない。」−−−説明書はよくは読まれないものだというのが実態だが、それはおいとくとして、この井上氏の言葉には励まされる思いがする。

その他

笑っておぼえるコンピュータ事典

オススメ度:☆☆☆

著者:小田嶋隆

出版社:ジャストシステム

コメント:元テクニカルライターの小田嶋氏が「マニュアル」の項で訴えるマニュアル制作の厳しい実情は、テクニカルライターにはうなずけることばかり。マニュアル制作関係者はぜひご一読を!

パソコンは猿仕事

オススメ度:☆☆☆

著者:小田嶋隆

出版社:小学館文庫

コメント:いつもながらの皮肉の効いた文章のコラム集。中でも、ハイテク音痴に対する嫌がらせを「セクハラ」ならぬ「テクハラ」(テクニカル・ハラスメント)と名づけた「テクハラの傾向と対策またはアナログオヤジ残酷物語」は、マニュアル業界関係者およびパソコン本出版関係者必読のコラムと思う。

マニュアルはなぜわかりにくいのか

オススメ度:☆

著者:堺屋太一ほか

出版社:毎日新聞社

コメント:OA機器などのマニュアルのわかりにくさをテーマに、その分析や対策を解説した本。堺屋太一氏の担当は巻頭の「情報摩擦はなぜ起こったか」のみで、それもあまりマニュアルとは関係ない話。要は人寄せパンダ。

平成テクニカルライター養成講座

オススメ度:☆

著者:武井一巳

出版社:メディア・テック出版

コメント:本書ではテクニカルライターにはパソコンブックライター、パソコン雑誌ライター、マニュアルライターの三種類があるとしており、そのうちのパソコンブックライターのことを中心に、その仕事内容、日常生活、営業や企画づくりのノウハウなどを紹介。テクニカルライター志望の人には大いに参考になる。ただし実用書としてよりは、読み物として楽しむくらいの気持ちで読むことを薦めたい。

ジャーナリズム論

オススメ度:☆

著者:本多勝一

出版社:すずさわ書店

コメント:『カナダ・エスキモー』、『ニューギニア高地人』、『中国の旅』など数々のルポルタージュで有名な本多氏だが、テクニカルライターには『日本語の作文技術』の著者として知られているかもしれない。『ジャーナリズム論』はそんな本多氏のジャーナリストとしての姿勢、新聞などのマスメディアの問題点を明らかにした評論集。マニュアル制作には直接は関係のない本だが、文章を書いたりマニュアルという印刷物を世に送り出したりする者の基礎的素養として、本書の「事実とは何か」での本多氏の主張などは頭の片隅に置いておきたいものだと思う。その主張とは、客観的事実などというものはないということ。事実には必ず主観がついてまわる。このことは、むしろ社会人として覚えておくべきことかもしれない。 もうひとつ、「職業としての新聞記者」という文章で氏が紹介しているエドガー・スノーの言葉「財産のないフリー・ランサーは奴隷にすぎない」も強く印象に残った。フリーランサーというと好きな仕事だけをしていられるように思われがちだが、実際にはそんなことはないということは自分も経験的に理解しつつある。それをわかりやすく表現したのがこの言葉だ。しかしまあ見方を変えれば、サラリーマンにしろ経営者にしろ、何かの奴隷だと言えなくはない。ことさら”財産のないフリー・ランサー”だけが奴隷的立場にあるわけではないだろう。”フリー”ではないということは忘れてはならないだろうが。(2000.3.17)

MBAクリティカル・シンキング

オススメ度:☆☆

著者:グロービス・マネジメント・インスティテュート

ISBN:4-478-49032-5

出版社:ダイヤモンド社

コメント:経営コンサルティング会社グロービスの本。クリティカル・シンキングとは、「自分がきちんと論理的に考えているかチェックしながら思考を進めていくこと」。ビジネス上のさまざまな課題や問題に直面したときに、的確にそれに対処するためにはどのように考えればよいのか、その技術を解説したのが本書だ。

考える技術と聞くと、本多勝一氏の「作文技術」を連想する。本多氏は、文章のわかりやすさは技術の問題であり、それは学習可能だと主張している。

考えることにも「技術」はあり得るのだろうか。本書を読むと、それがあると確信できる。その3本柱は、論理展開、因果関係の把握、構造的アプローチ。そしてその技術をサポートするものとして、考え方のフレームワークもいろいろと紹介される。

さて、この本を読んで、自分の思考は改善されたのか。当然のことだが、読むだけで思考力が向上するわけではないのだ。しかし本書で解説されている方法論に則ってきちんとした訓練を積めば、おそらくはたいがいの人は成果があるのではないだろうか。そう思わせるだけの説得力のある内容だった。(2001.6.30)

暗号化

オススメ度:☆

著者:スティーブン・レビー、斉藤隆央訳

ISBN:4-314-00907-1

出版社:紀伊国屋書店

コメント:スティーブン・レビーらしく、技術と人の関わりを感動的に描いた好著。暗号というとスパイの世界のことのようだが、実は我々の生活に欠かせないものとなっている。特にインターネットの電子商取引においては不可欠の技術。我々は知らないうちに暗号化技術の恩恵に浴しているといえる。

米国は、この暗号の技術を長い間、安全保障という大儀のもとで厳重に管理してた。敵国のスパイが第三者に解読できない暗号を使って情報をやり取りしていたのでは、情報の傍受ができなくなってしまう。だから暗号の技術は一般の人々には教えないし、自由に使うこともできないようにする法律で縛る。そういう理屈。暗号の研究も、国家機関で秘密裏に行われていた。ところが、1970年代に公開鍵暗号という画期的な暗号技術が民間の研究者たちによって生み出された。この強力な暗号技術が普及することを米国政府は防ごうとし、そこから民間と政府の長い長い攻防が始まった。

本書の内容は、公開鍵暗号の技術の誕生と成長のドラマ、そして国家権力との長い攻防だ。一時期話題になったクリッパーチップ問題の話も詳しく出ている。 (2002.6.8)

XPエクストリーム・プログラミング入門

オススメ度:☆

著者:ケント・ベック、長瀬嘉秀監訳、永田渉・飯塚麻理香訳

ISBN:4-89471-275-X

出版社:ピアソン・エデュケーション

コメント:ソフトウェア開発手法の新しい潮流であるエクストリーム・プログラミングの解説書。プログラミング関係の本ではあるが、プログラム言語の解説などは一切出てこない。一種の思想書といってもいいだろう。それは単なる開発手法というレベルにとどまるものではなく、仕事に取り組む姿勢、人生のあるべき姿、といったものまで含まれてくる。それゆえ、この本はプログラマのみならず、あらゆる労働者にとって刺激的な内容になっていると思う。(2002.10.29)

インタビュー術!

オススメ度:☆

著者:永江朗

ISBN:4-06-149627-1

出版社:講談社現代新書

コメント:雑誌には必ずといっていいほど「インタビュー」が掲載されている。しかし、我々が何気なく読むインタビューにも、実はいろいろなスタイルがあるのだということをこの本は教えてくれる。題名に「術」とはあるが、技術的なことよりも「インタビューとは何か」というある種哲学的なテーマを考える本。

それにしても、しっかりしたライターの文章を読むのは気持ちいい。文章が論理的だし、興味をそらさずに最後までひっぱってくれる。(2002.12.21)

生成文法がわかる本

オススメ度:☆

著者:町田健

ISBN:4-327-37680-9

出版社:研究社

コメント:生成文法は著名な言語学者チョムスキーが開拓した分野。その内容についてはこれまでまったく知らなかったのだが、心理学の本で生成文法への言及があったので、わかりやすそうな本としてこれを購入。生成文法は非常に難しいものらしいのだが、本書ではくだけた語り口でアウトラインを紹介してくれる。

生成文法では、文法の構造を深層構造と表層構造に分け、変形規則と呼ばれるものに従って深層構造から表層構造が生成される。「生成」文法という名称はここに由来する。

生成文法でもっとも面白いと思うのは、人間にはもともと普遍的な文法が生まれつき備わっているという考え方だ。それを普遍文法という。どの国のどの人種の人であっても共通の文法を持っていて、それを土台にして各言語の文法が組み立てられるというわけだ。

そういうことを考えている言語学の世界をちょっとだけ覗くことができた本である。(2003.11.22)

わかりやすさの本質

オススメ度:☆

著者:野沢和弘

ISBN:4-14-088169-0

出版社:NHK出版

コメント:知的障害者向けの新聞「ステージ」の制作にボランティアとして参加している新聞記者による、「わかりやすさ」をめぐるドキュメンタリー。 本書の前半は、一般紙と「ステージ」の記事を対比し、一般紙の記事のどういうところがわかりにくいかを分析し、どうすれば知的障害者でもわかるものになるかの技術を解説している。後半は、知的障害者も編集に参加している「ステージ」の活動のことや知的障害者とのコミュニケーションなどについての話。

著者によれば、新聞記事は「義務教育を卒業した人なら誰でも理解できるわかりやすさ」をルールとして書かれているとのこと。一方、「ステージ」は小学校三年生くらいでもわかるもの、というのが方針。これがなかなかやっかいなことだというのが本書からよくわかる。一般紙の記事をベースに単に漢字を減らしたり専門用語を言い換えたりするだけではダメで、内容の絞り込み、順序の組み換えなど、抜本的な作り変えが必要なのだ。

例示された一般紙と「ステージ」の両記事を読んでハッとさせられたのは、「ステージ」の記事によってその報道の肝の部分がよくわかるということ。一般紙の記事を読んでわかった気になっていても、実はかなりいい加減な理解でしかなかった、ということが自分の場合はあるようだ。 「わかりやすさ」ということを考えるうえで参考になる本。(2006.2.24)

「分かりやすい教え方」の技術

オススメ度:☆

著者:藤沢晃治

ISBN:978-4-06-257623-9

出版社:講談社

コメント:藤沢晃治氏の「分かりやすい」シリーズ第4弾。分かりやすい説明、分かりやすい表現、分かりやすい文章ときて、今回は分かりやすい教え方について。

 「文章」はともかくとして、「説明」や「表現」と「教え方」とはどう違うのか?とタイトルだけ見ると思ってしまうのだが、読むと全然違うテーマなのだということがわかる。分かりやすい説明や表現というのはその場で理解してもらうことが目的であるのに対し、「教える」ということは単に理解してもらうだけでなく、それを定着させ、身につけさせることが目的となる。いわば、説明や表現の技術の先にあるのが、「分かりやすい教え方」の技術だ。

その考えに立ち、本書では「分かりやすく教える」五つの心構えと、「分かりやすく教える」八つの技術について解説している。 教える立場というと、教師がまず思い浮かぶが、新入社員の教育をしたり、家族にパソコンを教えたり、研修で講師をしたりと、人はさまざまな場面で「教える」ことがある。そういうときに本書に記されたノウハウは役に立つことだろう。 (2009.4.12)

わかりやすく〈伝える〉技術

オススメ度:☆

著者:池上彰

ISBN:978-4-06-288003-9

出版社:講談社現代新書

コメント:NHKの元記者にしてニュースキャスターの著者が、子供向けニュース番組などの経験を通じて培った「わかりやすく伝える技術」を伝授。プレゼンテーションに焦点を当てた構成となっているが、ビジネスメール、営業、打ち合わせといったビジネスマンの日々のコミュニケーション全般に応用が利きそう。なにより、この本自体がわかりやすく書かれており、著者の「伝える技術」のよい実践例となっている。(2010.8.27)