伊藤テクライト事務所

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No.431 音声CD取扱説明書

 ロボット掃除機ルンバ(アイロボット社)に、視覚障がい者モデルが登場しました。操作ボタンに凸点を付けてあるほか、通常の取扱説明書のほかに日本点字図書館の監修による音声取扱説明書を同梱しているそうです。これは音声CDに収録されているとのこと。通常の取扱説明書をそのまま読み上げたものなのか、それとも音声用に構成などで別の工夫が凝らされているのか、興味を覚えますね。(2013.12.3)

No.430 製品の事故情報

 ネット上で製品の事故、不具合、リコールなど、広い意味で安全に関する情報が得られるようになってきました。

 たとえば、「不具合ドットコム」には、製品の不具合やファームウェアのアップデートに関する情報が投稿によって集められています。リコール情報を集めた「リコールドットjp」というのもあります。こちらは意外なことにヤマト運輸の関連会社が運営しています。

 これ以外にも、公的機関によるサイトがいくつか。経済産業省の「製品安全ガイド」、国民生活センターの「回収・無償修理等の情報」、国土交通省の「自動車のリコール・不具合情報」、厚生労働省の「医薬品等回収関連情報」、製品評価技術基盤機構の「製品安全・事故情報」、製品安全協会のSGマーク貼付製品のリコール情報を提供する「リコール情報」。

 このようなサイトを参照し、製品にどのような事故や不具合がありうるかを把握することは、マニュアルに製品の安全情報を記載するうえで参考になりそうです。(2013.10.28)

No.429 ウェブページのタイトルが気になる

 最近、いくつかの企業のサイトをブックマークに登録して、気になったことがあります。ページのタイトルとして、企業名の前にキャッチフレーズ的な文言の入っていることが多いのです。たとえば「マニュアルのことでお困りなら何でもご相談ください! 伊藤テクライト事務所」といったようなタイトルです。企業名の前の文字列が長過ぎると、ブックマーク上で企業名が表示されなくなってしまうのです。ブックマーク上で企業名が見えないと何のサイトなのかわからなくなってしまいます。それでやむなく、企業名の前の文言を削除して登録することになります。

 たぶんSEOの観点でそのようなことがなされているのだと思いますが、サイト利用者にとっては面倒くさい。そのようになっているサイトの管理者は、ぜひご一考を。(2013.10.18

No.428 マニュアルの内製化のメリット・デメリット

 TC協会が主催するマニュアルコンテストでは、毎年「マニュアルオブザイヤー」を選んでおり、2013年はTOTO株式会社の「システムバスルーム サザナHD/マンションリモデルバスルームWF/WT 取扱説明書」に決まったそうです。同社は「ウォシュレットKF・KM取扱説明書(施工説明書付)」も部門賞を受賞しており、同社がマニュアル制作に力を入れていることがうかがわれます。

 住宅産業新聞社によると、「受賞作品は、製品を開発したTOTOウォシュレットテクノ(TWT)と、取扱説明書を制作したサンアクアTOTOによる初の合作だ。同社はウォシュレットの取扱説明書で3年連続3回目の受賞となった。マニュアル製作のノウハウはTOTOグループ内で蓄積する。」ということで、マニュアルの内製化が功を奏したと見てよさそうです。

 一般論になりますが、ノウハウの蓄積という観点では、内製化は有効でしょう。製品情報へのアクセスもセキュリティ管理もしやすいというメリットもあります。他方、マニュアル制作のために人材や場所、機材を割く必要があるためコストがかさむことが予想されます。また、マニュアル制作技術のガラパゴス化や発想の固定化をどう防ぐかという課題もありそうです。そう考えると、必ずしも内製がベストということではなく、企業の事情によって内製と外製(という表現があるかどうかわかりませんが)のどちらがよいかを判断する必要がありそうです。(2013.10.11)

No.427 シニア層とスマホ

 日経パソコン9月23日号に「活気を帯びるシニア向けスマホ」という記事がありました。ソフトバンクの「あんしんファミリーケータイ 204W」「シンプルスマホ」、NTTドコモの「らくらくスマートフォン2 F-08E」「らくらくスマートフォンプレミアム F-09E」など、シニア向けのスマホが続々と登場しているという内容です。

 これらに共通しているのは、トップ画面に大きいボタンを配置するなどして操作を簡単にしていること。機種によっては、ボタンをぐっと押し込んだときに振動し、ボタンが押されたことがわかるようになっていたり、タッチした箇所に青い円が表示されて、どこがタッチされているかわかるようになっていたりするそうです。

 ところで、シニア層とスマホということで僕がまっさきに思い浮かべるのは、指が乾燥しているとタッチ操作が効かなくなる現象です。そういうことがあるからスマホが使えない、という話を聞いていたのですが、ある日、自分でも経験することによって、これは大きな課題だと実感しました。僕が経験したのは、健康診断のために前日の夜から何も飲み食いせずに朝を迎えたときのことです。受診待ちの際にスマホを取り出したのですが、タッチもスワイプも、ほとんど効かないのです。30分ほどしてからやっと操作できるようになりましたが、あのときは非常に焦りました。

 手が乾燥していると、スマホは使えないのです。シニア向けのスマホを作るなら、まずこの点を第一に解決すべきだと思うのですが、上記の新機種はその対策が施されているのかどうか、気になるところです。(2013.10.3)

No.426 増え続ける解像度の通称

 日経パソコン8月26日号のスキルアップ講座(p.95)に、PCやスマホなどのモニターの解像度の通称をまとめたものが載っていました。通称についてはつねづね「わかりにくい!」と思っていたので、これはありがたかったです。一部を下記に引用しておきます。

 実際のところ「WSXGA+」や「QUXGA」などといわれて、それがどういう解像度なのかパッとわかる人はごく一部ではないでしょうか。そうなってくると、このような通称にどれくらい意味があるのかなあと思ったりもします。解像度の数値をそのまま「1680×1050」とか「3200×2400」と言ったほうがよいのではないでしょうか。

 とはいえ、いまは解像度が低くて困るということもあまりなさそうですから、もはや解像度を気にすることもないのかもしれません。例えば、スマホ購入者のどれくらいが解像度を気にするでしょうか。1、2割といったところではないでしょうか。解像度の通称のカオス状態は、やがて消えていく過渡的なものなのかもしれません。

通称  ドット数(横×縦)  アスペクト比 
8K4K or 8K 7680×4320 16:9 
QUXGA Wide  3840×2400 16:10 
4K2K or 4K    4096×2304  16:9 
4096×2160  16:8.4 
4096×2048  16:8 
3840×2160  16:9 
QFHD or QHD  3840×2160  16:9 
QUXGA  3200×2400  4:3 
WQXGA  2560×1600  16:10 
WQHD  2560×1440  16:9 
QXGA  2048×1536  4:3 
WUXGA or フルHD  1920×1200  16:10 
2K 2048×1080  16:8.4 
1080i/p or フルHD  1920×1080  16:9
UXGA 1600×1200  4:3 
WSXGA+  1680×1050  16:10 
SXGA+  1400×1050  4:3 
WXGA++ or HD+ 1600×900  16:9 
SXGA  1280×1024  5:4 
WXGA+  1440×900  16:10 
WXGA     1366×768  16:9 
1360×768  16:9
1280×800  16:10 
1280×768  16:9.6 
XGA+  1152×864  4:3 
XGA 1024×768  4:3 
WSVGA   1024×600  16:9.4 
1024×576  16:9 
SVGA  800×600  4:3 
VGA  640×480  4:3 
QVGA  320×240  4:3 

日経パソコン8月26日号のスキルアップ講座(p.95)より

(2013.8.30)

No.425 夜の電子メール

 メールは、電話と違っていつ送ってもよい――それがメールのメリットの一つとされてきたと思います。ところが、私は最近、送信する時刻を気にするようになりました。それというのも、相手がケータイ(スマートホンを含む)の場合があるからです。深夜に送ってケータイを鳴らすことになっては…、と思うのです。

 仕事のメールであれば、相手もほぼPCで受信しているはずですから、そういう遠慮はしませんが、仕事以外の付き合いでは、ケータイでメールを受信する人、ケータイでしか受信しない人というのもけっこういるのです。

 そんなわけで、メールを送信する時刻を指定する機能がないものかと、愛用のOutlook2010のあちこちを覗いてみたところ、ありました! 新規メッセージのウィンドウの[オプション」リボンにある[配信タイミング]というボタンです。これをクリックするとダイアログボックスで配信時刻を指定することができます。

 皆さんは、メールの送信時刻については、どうされてますでしょうか。そもそも深夜に起きてメールを書いたりすることがない、という健全なライフスタイルの方がほとんどかもしれませんが。(2012.1.18)

No.424 パソコン満足度ランキング

 日経パソコン2011年8月22日号に「パソコン満足度ランキング」という記事が掲載されています。約2万人のパソコンユーザーに対してアンケート調査を行い、メーカーごとのパソコンの満足度を調べたものです。この調査、内容を変えつつ、もう10年くらいも続いているのではないでしょうか。調査項目のなかにユーザーサポートやマニュアルのことが含まれているので、ずっと関心を持ってきました。

 今回の調査結果にも、「サポート満足度」という基準があり、そこに「マニュアル/電子マニュアルの満足度」という項目があります。そのランキングは以下のとおり。

1位 エプソンダイレクト
2位 パナソニック
3位 NEC
4位 富士通
5位 東芝
 すべて国内メーカー。下位には外資系が並んでいるので、国内メーカーのサポートの充実度がうかがわれる結果です。

 ところで、2位のパナソニックに関する本文記事が興味深かったので、引用しておきましょう。

パナソニックは、電話/メールサポートの満足度で1位となった。2009年にWeb上のFAQを強化し、2010年には検索の精度を高めた。ユーザーの自己解決を促すことで電話の問い合わせが減った。その結果、「電話のつながりやすさや、応対の丁寧さの向上につながった」」(日経パソコン2011年8月22日号、p.55)

 WebのFAQの強化が、サポートの満足度全体の向上につながったというのです。一種の好循環とでもいいましょうか。一つの改善が、ほかのことの改善にも波及するということがあるわけです。これはWebのFAQに限らないでしょう。電子マニュアルの改善、紙マニュアルの改善が、同じようにサポート全体の質を向上させるということも充分考えられます。Webやマニュアルの改善にかけるコストについては、上記のような波及効果も考えて評価する必要があるといえそうです。(2011.8.23)

No.423 見逃されているニーズ

 5月30日の朝日新聞の投書欄に「商品説明は老人に優しくして」と題した、75歳のかたの投書が載っていました。浴室で髪のトリートメントをしようとしたら、それがシャンプーのボトルだった。このようなボトルの説明やサプリメントの説明書などの文字は小さく横文字が多い。高齢者の一人暮らしも多くなっている。重要な表記は多きすべき、という意見です。

 もっともな話だと思います。高齢化社会、超高齢化社会と言われて久しいのに、まだ企業はその状況に対応しきれていないのかもしれません。携帯電話の分野では、らくらくホン(ドコモ)、簡単ケータイ(au)、かんたん携帯(ソフトバンク)といった中高年向け製品が一定のシェアを占めていますが、他の分野ではどうなのでしょう。ことによると、メーカーは高齢者の増加で生まれている巨大なニーズを見逃しているのかもしれません。(2011.5.30)

No.422 常用漢字表の改訂

 昨年の11月30日の内閣告示により常用漢字表が改訂されました。前回の改訂は1981年(昭和56年)なので、なんと29年ぶりということになります。

 常用漢字表は公用文のための漢字の使い方の基準です。ですが、メーカーの取扱説明書も常用漢字表に準拠する場合が多いので、私たちテクニカルライターにとってもこの改訂は関わりがあることです。

 いま使った「関わり」という言葉も、従来なら「かかわり」と書くところです。従来の常用漢字表にはその読み方がなかったからです(表外音訓という)。また、「」や「」は、従来の常用漢字表にはない漢字(表外字という)でしたので、「保護シールをはる」「ケースの汚れを布でふく」のようにひらがなで書いたりしました(漢字を使うのが一般化しているという判断で漢字を使うケースも少なくありませんでしたが)。新しい常用漢字表では、これらの漢字や読み方が記載されているので、「関わり」「貼る」「拭く」のどれも大手を振って使えるということになります。

 29年もたてば、漢字の使われ方が変化するのも当然のこと。その変化に合わせて基準を修正するのは自然なことですね。今回の改訂を歓迎したいと思います。(2011.1.9)

No.421 今年もよろしくお願いいたします

今年が皆さんにとってよい一年でありますように。(2011.1.1)

No.420 約款・説明書をわかりやすくしたいなら

「分かる約款・説明書に  消費者団体、企業にアドバイス」という記事が朝日新聞に掲載されていました(2010年11月14日)。“読まれない書類の代名詞”であるモノやサービスの約款や説明書を分かりやすくすべく消費者団体にアドバイスを求める企業が出てきたという内容です。事例として、明治安田生命が医療保険の約款を消費者機構日本(COJ)にチェックしてもらった例と、三菱地所が重要事項説明書について消費者支援機構関西(ケーシーズ)に相談した例が取り上げられています。結果として、文字サイズを大きくしたり、個条書きを表に整理したり、文字だけの説明だったのを図解にしたり、といった改善がなされたそうです。

 約款・説明書をわかりやすくしたい企業が消費者団体に相談するというのは悪くない選択だと思います。しかしもっとよい相談先はテクニカルライターだと思うのは、私だけでしょうか。テクニカルライターは消費者の視点で見る習慣を身に付けているうえ、複雑な情報をわかりやすく説明する技術やノウハウを持っているのですから。消費者団体は、わかりにくい箇所を指摘することはできても、どう改善すればよいかについては専門的知識を持ってないのではないでしょうか。

 企業の皆さん、約款・説明書をわかりやすくしたいなら、ぜひテクニカルライターへ!(2010.11.14)

No.419 幸徳秋水、翻訳に苦心す

 来年で没後百年を迎える明治の思想家、幸徳秋水(1871-1911)が「翻訳の苦心」という文章を残しています。これがなかなか興味深いのです。

 彼は「翻訳は著述よりもはるかに困難である、少くとも著述に劣るところはない」と断言しています。その理由として挙げているのは、次のようなことです(表現は変えてあります)。

1.原文の意味を正確に理解することは、ネイティブでない者には困難である。

2.原文の意味が正確に理解できても、その意味を表す適切な訳語がなかなか見つからない。

3.専門用語などでは該当する訳語が存在しない場合もあり、その場合は新しい言葉を作らなければならない。

4.言葉をたんに置き換えるだけではいけない。文体をも伝える必要がある。

 仕事、趣味を問わず、多少なりとも翻訳を経験したことがある方なら、すべて大いにうなずける話ではないでしょうか。とりわけテクニカルコミュニケーションの分野の翻訳では、3の話は、頻繁に遭遇する問題でしょう。幸徳秋水はBourgeoisie(ブルジョアジー)の訳語をどうすべきかで苦労したことを例に挙げています。明治時代は、西洋から新しい思想や技術が次から次へと入ってきた時代でしょうから、訳語を用意するのも大変だったろうと思います。同じように私たちも、大量に流入して続けているITC関係の新しい概念や技術用語に対処していかなければなりませんから、明治人と同じ苦労に直面させられているといってよいかもしれません。そんな風に考えると、幸徳秋水のことが少し身近に感じられますね。(2010.8.21)

No.418 梅棹忠夫の戒め

 7月3日に亡くなった梅棹忠夫氏が、戒めとして教え子に次のことを言っていたそうです。

(1) 文章は分かりやすく書かなければいけない。誰でも理解できる(隣の豆腐屋のおばさんにも分かる)平易なものでなければならない。

(2) 本を読み過ぎるな。読み過ぎるとバカになる。読む本の数はなるべく減らして、そのぶん現場に行って歩け。自分の足で歩いて、自分の頭で考えろ。

(新潮社「考える人」メールマガジンより)

 これは研究者に向けた言葉ではありますが、私たちテクニカルライターにとっても当てはまりそうです。(1)はいうまでもないことですね。分りやすく書くということは、常に意識しておくべきことです。(2)はどうでしょう。私たちにとって「現場に行く」こととは「説明する実機・製品に触れること」だと解釈できます。とすれば、これはやはり大切な戒めといえるのではないでしょうか。(2010.7.15)

No.417 原発のマニュアル

 2010年5月14日付けの朝日新聞朝刊に「再開もんじゅ チグハグ」という記事が載っていました。1995年のナトリウム漏出火災事故から十数年を経て運転を再開した高速増殖炉「もんじゅ」が、再開早々、操作ミスや警報発表の混乱でドタバタしているというのです。

 記事を読むと、この問題には「マニュアル」も関係していることがわかります。大きく報道された制御棒操作のミスに関しては、必要な操作が操作手順書操作マニュアルですね)に明記されていなかったことが判明しています。運転員が正しい操作法を教わっていたのにそれを忘れたというのが直接の原因ですが、人間ですから忘れることがあるのは当然。忘れた場合に手順を確認できるよう、正しい手順を記載したマニュアルを用意すべきでした。

 警報発表の混乱というのは、数千種類にのぼる警報の種類のうち、どれが鳴ったときに発表するかという基準が明確になっておらず、プリンターの紙詰まりによる警報までもカウントして、警報が何件鳴ったと発表したということです。このようなことは、業務マニュアルなどで基準を明確にしておくべきです。

 組織や施設の業務や操作に関する情報は、それに携わる個人が自分の頭に入れておけばよいというものではありません。組織では、時間の経過とともに職員は入れ替わっていくものです。情報が個人の頭の中にしかないのであれば、人から人へ正確に継承させることはできません。また、人間は必ず間違いをするものです。今日までは間違わなかったとしても明日は間違うかもしれない。そのような前提に立って、業務マニュアルや操作マニュアルは準備されるべきでしょう。「もんじゅ」で使われているマニュアルの制作にテクニカルコミュニケーターがしっかりと関わっていれば、今回の混乱は避けられたかもしれませんね。(2010.5.15)

No.416 テクニカルライターの責任

 「誤使用・不注意 死亡228人」という記事が4月10日の朝日新聞夕刊に掲載されていました。石油ストーブ、ガスコンロなどの身近な家庭用製品の誤使用や不注意により、2006年度から2008年度までの3年間で国内で228人の方が亡くなっているというのです。これは、製品の欠陥による事故は除外した数である点に注意してください。つまり、ユーザーの使い方の問題で起きた事故ということです。言い換えるなら、ユーザー自身が気を付けることで防げたかもしれない事故ということになります。

 ユーザーの立場としては、身を守るために、製品の使用でどういう危険があるかということを知っておく必要があるでしょう。そのための参考資料としてNITE(製品評価技術基盤機構)がホームページで公開している「製品事故から身を守るために<身・守りハンドブック>」という冊子はとても参考になります。

 一方、この問題は私たちテクニカルライターにとっても大いに関係することです。私たちの仕事は、使用上の注意を含む製品の取り扱い方法をユーザーに提供することと考えることができますが、上記の事故は「情報をユーザーに伝えきれなかったから起きた」と考えることもできるからです。

 「伝える」のは簡単なことではありません。取扱説明書にはほかにも記載すべき情報がありますし、取扱説明書を読んでもらえないこともままあり、注意情報を伝えようにも制限が多いというのが実態です。しかし、だからといって自分には関係ないことと知らんぷりを決め込んでよいわけではありません。ある注意情報一つの扱いが人の生死を分けるということもありうるでしょう。ユーザーの安全のために、「伝える」最大限の工夫をしたいものです。(2010.4.11)

No.415 テクニカルライターという職業

米国労働省労働統計局(BLS)の発行する Occupational Outlook Handbook, 2010-11 Edition  に、今回はじめて「テクニカルライター」の項が設けられました。仕事の内容、必要な教育、平均的収入、就労者数、今後の展望などまで記されており、興味深い内容です。米国での話ではありますが、この仕事が公の機関で正式に認知されたことは当のテクニカルライターとしては嬉しく思います。

我が国ではどうなっているのか? 日本では、総務省の統計局が定める「日本標準職業分類」によって職業が分類されるようです。 そこには残念ながら「テクニカルライター」そのものは項目としては存在しないのですが、「記者、編集者」という項目に、新聞記者、雑誌記者、ルポライター、スポーツライターなどとともに「テクニカルライター」が事例の1つとして挙げられてはいます。米国に比べると認知度は低いといえそうですが、事例にあったことはやはり嬉しいですね。少なくともこういう職業があるということを役所は認識しているということですので。(2010.4.1)

No.414 品質とスピード

昨年来、トヨタのリコール問題が話題になっています。プリウスのリコールでの修理内容は、「ABS制御プログラムを修正」するというもの。所要時間は40分ほどだそうです。

パソコンとは大違いですね。パソコンなら、たとえばWindows Updateで簡単に終わるようなこと。自動車の場合はそのような仕組みはありませんので、車を修理に出す必要があるということでしょう。

また、ここにはITと自動車のカルチャーの違い、市場の違いという一面もあるように思われます。IT製品は、完璧でなくても十分使える品質であれば市場に出し、問題があればそのつど直していくというのが一般的であるように思われます。品質の完全性よりも市場に出すスピードが重要だからでしょう。これはネットの世界ではより顕著です。極端な話、多少の不具合があることがわかっていても製品は市場に出されます。

自動車の場合は、不具合は人命に直結するということもあるからでしょうが、不具合がない完璧なものとして製品は市場に出されます。これは自動車に限らず、IT製品を除く多くの工業製品にいえることでしょう。それが従来の工業製品のあり方であったと思います。

このような違いは、TCの世界にもあるようです。従来の紙のマニュアルと、ネット上のドキュメント(オンラインマニュアル、メールマガジン、ブログ、ツイッターなど)とを比べると、後者は品質よりスピードが優先されているのではないでしょうか。良しあしは別として、現実がこのように動いている以上、それに対応していくことが私たちに求められているといってよいでしょう。(2010.3.13)

No.413 PAGE2010で印象に残ったこと

先日、PAGE2010というイベントを覗いてきました。日本印刷技術協会(JAGAT)主催の、印刷技術に関する総合的な展示会です。展示コーナーを駆け足で眺めてきただけですが、マニュアル制作に携わる者にとって印象に残る製品がいくつかありました。なかでも興味深かったのは、ネクストソリューションのNEXTDarwinです。いま注目のDITA技術を利用し、マニュアルの執筆、編集、執筆データの管理、自動組版までの工程をすべてウェブ上で行えるシステムです。インド、アメリカ、ドイツにいる執筆者がブラウザ上で執筆した原稿を、日本にいるまとめ役がやはりブラウザ上で整理し、中国にあるプリンタで出力する――そんな近未来を想像したくなる技術でした。(2010.2.7)

No.412 言葉の意味の細かさの違い

雑誌「考える人」(2010年冬号)の「伝え合いにつきまとう「制約」」という記事(筆者は西江雅之氏)で、スペイン語に関するこんなことを知りました。「明日、友だちと会う」の「友だち」をスペイン語で書くとき、友だちが男一人であれば"amigo"、複数であれば"amigos"、女一人であれば"amiga"、複数であれば"amigas"となるのだそうです。つまり、性別や単数かどうかはおのずと示されるわけです。

似たような例は、中国語にもあります。「いとこが遊びにきた」と日本語で書くとき、父方・母方どちらのいとこか、男か女か、自分より年上か年下か、といったことはあいまいです。ところが中国語ではそれぞれ表現が変わるため、おのずとそのことも明確になる。たとえば父方の男の年上のいとこならば「堂哥」、母方の女の年上のいとこならば「表姐」となるのだとか。 

上の二例は日本語よりも外国語のほうが言葉が細分化されているケースですが、逆のようなケースもあるでしょう。たとえば英語の"you"を日本語にどう訳すかは、自分と相手がどういう関係なのかによって「君」「おまえ」「あなた」「貴様」「貴君」「貴殿」などいろいろな場合が考えられます。

おそらく文化や生活習慣などの違いでこのような言葉の意味の細かさが異なるのでしょうが、翻訳者の方は大変でしょうね。たとえば日本語の「友だち」を中国語に訳す場合なら、それが父方か母方か、男か女か、年上か年下かを確認する必要が生じるのですから。しかも、このような言語間の違いはほかにもたくさんあるでしょう。言葉の面白さと難しさを感じます。(2010.2.1)

No.411 今年もよろしくお願いいたします

早いもので、このサイトを開設してから10年ほどになります。この10年を振り返ってみると、景気の変化や通信環境の進歩は著しいものの、仕事の本質的な部分はあまり変化していないように思われます。この先の10年はどのようなものになるのでしょうか。いずれにしても、一つ一つの仕事を丁寧にやっていくことが自分の使命と考え、日々努力していこうと思います。(2010.1.5)

No.410 通信いまむかし

 夕方、所用で宅配業者の集荷場に荷物を持ち込みました。コンビニなどよりも遅くまで当日分として受け付けてくれますし、送料も若干安くなります。

 それで思い出したのですが、数年くらい前までは、よくこうして夕方に集荷場に原稿や校正紙を持ち込んだものでした。それに間に合わなければファックス。数十枚、ときには百枚以上も送ることもありました。当時までは、ファックスはテクニカルライターの必需品でした。

 いまは宅配便で原稿を送ることも、ファックスを使うこともなくなりました。原稿の送付も、校正のやり取りもすべてネットで済んでしまうからです。

 便利になったものですね。十年後にはどうなっているのでしょうか。(2009.11.15)

No.409 携帯用語の統一を歓迎

分かりにくい携帯用語、統一方針…12月めど」という記事がYOMIURI ONLINEに掲載されていました。「「パケ・ホーダイ」「ダブル定額」「パケットし放題」など紛らわしい専門用語が多い携帯電話やインターネット関連のサービス内容を消費者が比較検討しやすくするため、テレコムサービス協会などの4業界団体は12月をめどに用語を統一する方針」とのことです。

 素晴らしいことですね。ユーザーとして大いに歓迎したいです。なぜもっと早く実施されなかったのか、とさえ思います。

 ただ、実施には困難も伴うことでしょう。記事によると「4団体が通信・ネット業界の各種サービスやその内容を分かりやすく説明できる共通の用語を定める。その後、各団体が加盟社に対し、カタログや商品広告などで統一した用語を併記したり、言い換えたりするよう求める」そうですが、果たしてそううまくいくかどうかが心配です。サービス内容がまったく同じであれば問題ないでしょうが、似て非なる場合はどうするか。用語を統一することでかえって誤解を招いてしまう可能性もあるでしょう。そこをどう解決するかは、テクニカルコミュニケーションの領域の課題といってよいかもしれませんね。(2009.9.26)

No.408 読点にご注意を

 YOMIURI ONLINEにこんな記事が掲載されていました。

 俳優の藤田まことさんと、その妻に融資していた金融業者の管財人が、貸付金3億円の支払いを求めた訴訟の判決が7日、大阪地裁であり、目代真理裁判官は管財人の請求通り、藤田さん夫妻に全額の支払いを命じた。(後略)(2009年9月8日YOMIURI ONLINEより)

 この文章、意味がわかりにくいとは思いませんか? 支払いを求めているのが誰で、求められているのが誰か、私にはすぐにはわかりませんでした。

 わかりにくさの主因は「俳優の藤田まことさんと、」の読点でしょう。このせいで、あたかも藤田まことさんと管財人が訴訟を起こしたように読めてしまいます。この段落のあとに続く文章によると、奥さんは藤田まことさんを連帯保証人として融資を受けていたそうです。融資を受けたのは奥さんのほうだということで、問題の読点を入れたのでしょう。しかし、それでは意味がとてもわかりにくくなってしまう。

 誤解のないようにするには問題の読点を削除したうえで、「俳優の藤田まことさんの妻に融資していた金融業者の管財人による、貸付金3億円の支払いを求めた訴訟の判決が7日、大阪地裁であり、目代真理裁判官は管財人の請求通り、藤田さん夫妻に全額の支払いを命じた。」としてはどうでしょう。

 読点の位置しだいでは、意味が変わってしまったりわかりにくくなってしまったりするので、注意が必要ですね。(2009.9.9)

No.407 マルクスの情報整理術

以前、当コラムの「No.263 ダーウィンの仕事術(2)」で進化論のチャールズ・ダーウィンの情報整理の方法をご紹介したことがあります。専用の棚と紙ばさみを使い、いわば紙のデータベースを作るというのがダーウィンの手法です。今回は、たまたま読んだ『マルクスは生きている』(不破哲三著、平凡社新書)という本に載っていたマルクスの情報整理術のことをご紹介します。

マルクスは大著『資本論』(読んだことありません!)のために膨大な草稿を書いたそうですが、それ以外に、経済学の文献の膨大な引用を五十数冊に及ぶノートに抜粋していました。こうしておけば、ある文章を引用したいというときに、いちいち図書館などに行く必要がなくなるわけです。

しかし、五十数冊のノートのどこに何が抜粋してあるかがすぐわからないのでは困ります。そこでマルクスは、別に「引用ノート」を作り、十数項目のテーマごとに、必要となると思われる抜粋を転記しました。いわば抜粋の抜粋ですね。あとはこの1冊の「引用ノート」だけで間に合うというわけです。ところが、作業を進めるうちに、項目が増え、分量も90ページを超えるものとなってしまったのです。これでは、「引用ノート」のどこに何があるかがわかりません。

そこで、今度は、「引用ノート」の「索引」を作りました。21項目のテーマに分け、必要な文章が「引用ノート」のどこにあるかを整理したのです。これは7ページで収まりました。

引用が必要なときは、まず「索引」を参照し、「引用ノート」のどこにあるかを調べる。もし、「引用ノート」からの転記で足りない場合は、元の「抜粋ノート」を取り出す。このようにしてマルクスは『資本論』を書いたわけです。

異人の伝記などを読むと、独自の仕事のスタイルを確立している場合が多いように思います。余人のなしえない偉業を達成するには、そのための仕事術が必要になるのかもしれませんね。(2009.7.18)

No.406 リモコンがいっぱい

我が家のリビングにはじつに多くのリモコンがあります。ケーブルテレビ用、義弟に譲ってもらった液晶テレビ用、液晶テレビ用に先日購入したサラウンドシステム用、DVDプレーヤー用、ビデオデッキ用、ハードディスクレコーダー用、さらには息子のゲーム機用が数個も。十個以上のリモコンがひとつの部屋に存在しているのは、混沌というほかない状況です。

で、どういうことが起きるか。テレビを見る場合でいうと、まずテレビ用リモコンでテレビの電源をオンにし、サラウンドシステム用のリモコンでサラウンドシステムをオンにし、音声ソースをテレビに切り替え、ケーブルテレビ用のリモコンでチャンネルを選択する、という具合に3つのリモコンの操作が必要なのです。しかも、現状、テレビ放送は我が家の場合、アナログ、地上デジタル、BS、CATVの4種類があり、見たい番組によって放送を切り替えてからチャンネルを選択しなければなりません。いまやリモコンの使い方を考え考えしながらでなければ、テレビを見ることもできないのです。

つねづね「シンプルにいきたい」と思っている私としては、リモコンのないダイヤル式のブラウン管テレビ時代の単純さがちょっと懐かしく思えてしまいます。リモコンだらけになってしまった原因のかなりの部分は、無計画に家電品を導入した自分自身にあるといってよいのですが、それにしても……という気持ちもあります。技術は、生活を快適にする方向に進むべきものと思いますが、場合によっては生活をややこしくしてしまうこともあるようです。(2009.5.23)

No.405 猫の取扱説明書

ペットショップに行くと、値札の付いた檻に入れられた猫が並んでいます。十万、二十万と、けっこうな値段です。我が家にも猫が二匹いるのですが、どちらも野良出身で、店で買ったわけではありません(写真は、昨年の12月に来た新入り猫)。
ところで、店で販売される「商品」である猫には、取扱説明書のようなものは付いてくるのでしょうか? 餌のやり方、遊ばせ方、体の洗い方、病気対策など、飼うために知っておくべきさまざまな情報があるはずです。猫に引っかかれたり噛まれたりする危険もあるわけですから、そういう注意書きも必要かもしれません。猫に噛まれて怪我をしたら、誰かが製造物責任を問われる……などということはないでしょうけども。(2009.4.19)

No.404 電子ペーパーとマニュアル

ブラザー工業が「ブラザー ドキュメントビューワSV-100B」という製品を6月に発売すると発表しました。A4より一回り小さいサイズで約600グラム。A4サイズ1万ページ分のデータを保存できるそうです。同社は「メンテナンス現場でのサービスマニュアルの表示などに最適」としています。

サービスマニュアルの制作に関わったことのある方なら、この製品の利便性はすぐに理解できることでしょう。サービスマニュアルは多くの場合、数百ページもあって重量も何キログラムというレベルです。電話帳をイメージしてもらうとよいでしょう。ときにはそれが複数冊になります。サービスマニュアルは機器のメンテナンスなどの現場で使用するものですから、現場まで持っていく必要がありますし、現場でもそれを参照しながら作業しなければなりません。それが数百グラムの電子ペーパーで代用できるなら素晴らしいことです。印刷物を作る必要がないことから環境への負担も少ないかもしれません。

ただし、紙のほうが優れている点もあります。紙は書込みができますし、付せんを貼ったり端を折ったりして特定のページをすぐ開けるようにすることもできます。落としても踏んでも壊れないという安心感もあるでしょう。

電子ペーパーがどれだけ受け入れられていくか、現場や企業の反応が楽しみです。(2009.3.14)

No.403 新常用漢字表

先月、常用漢字表の改訂の概要がニュースとなっていました。191字の追加が予定されており、内閣の告示は来年の秋とのこと。改訂は29年ぶりだそうですから、国語界?のビッグニュースですね。

まだ1年半以上先のことではありますが、この改訂は私たちの仕事にも影響がありそうです。追加される予定の漢字には、「蓋」「爪」「芯」など取扱説明書で使うことがありそうなものもいくつか見受けられるのです。これまでは「ふたを開ける」や「フタを開ける」と表記していたものが、改訂後は「蓋を開ける」ということになるかもしれません。用字用語辞典の類も改訂されることでしょうから、それを買い直す必要もありますね。

個人的には、私の名前に入っている「藤」と、私の住んでいる県の名前に使われている「奈」とが追加されるというのが少し嬉しかったりします。(2009.2.1)

No.402 今年もよろしくお願いします

新しい年が始まりました。年々、正月の特別な感じが失われていくように思いますが、それでもやはり何かしら一つの区切りという感じはあるものですね。新しい気持ちで今年も頑張っていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

さて、2009年は当事務所にとっての区切りの年でもあります。私たちが独立して事務所をスタートさせたのが1999年のことですから、今年で10年ということになるのです。自らを省みれば至らないところが多々目につくわけではありますが、景気のさまざまな変動もあるなかでこうして10年間やってこれたことは幸せなことと思わざるを得ません。それができたのも、多くの方々に目をかけていただき、支えていただいたからだと思います。そのようなご厚意への感謝の気持ちを忘れず、次の10年間をさらに充実させるべく努力していこうと思います。(2009.1.3)

No.401 『パソコンを隠せ、アナログ発想でいこう!』を読む

 『誰のためのデザイン?』で有名なD.A.ノーマンの『パソコンを隠せ、アナログ発想でいこう!』(新曜社)を読みました。書かれたのは10年前ですが、内容は古びていません。むしろいま読むと、ノーマンの予測するハイテク製品の未来像が実際のものとなりつつあることがわかり、本書の価値がいっそう実感できるかもしれません。

 本書でのノーマンの主張は次の2つにまとめられるでしょう。

●コンピューターは隠れた存在であるべき。たとえば、電気を動力に変える装置であるモーターは、パソコン同様さまざまな用途に使われるが、電気ひげそり、扇風機、掃除機、洗濯機など、それぞれ専用の装置の中に組み込まれ隠れている。ユーザーはモーターそのものの使い方を意識する必要はない。コンピューターも同じように隠れた存在にならなければならない。(本書の原題が"The Invisible Computer"(見えないコンピューター)となっているユエンです)

●コンピューターの組み込まれたハイテク製品は、ユーザーがさしたる努力もなしに容易に使える家電品(情報アプライアンス)となるべきで、そのためにはテクノロジー主導ではなく人間中心設計によって開発されなければならない。

 アップル社の携帯用の音楽プレーヤーであるiPod(当然コンピューターが組み込まれています)などは、まさに情報アプライアンスの具体例と言えるでしょう。「人間中心設計」(Human Centered design)という言葉も、当時は目新しかったと思いますが、いまや製品開発の場では耳慣れたものとなっているといってよいでしょう。その普及にノーマンの果たした役割は小さくないのではないでしょうか。ノーマンの描くビジョンの輝きは、増してきているように思います。

 本書では、私たちテクニカルライターの現在の役割、そして人間中心設計で果たすべき役割についても言及されています。その部分については、少々理想化しすぎているような気がしないでもないのですが、本書を読まれた皆さんはどう思われたでしょうか。(2008.11.1)